日本製鉄がUSスチールを買収!なぜ今なのか?今後の展開は?

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日本製鉄は2023年12月18日、米国の鉄鋼大手USスチールを買収すると発表しました。買収額は約2兆円(141億ドル)で、日鉄として過去最大級のM&A(合併・買収)となります。日本製鉄グループの世界での粗鋼生産量は年6600万トンから年8600万トンに拡大し、1億トン体制の目標へ大きく前進します。

この記事では、日本製鉄がUSスチールを買収した理由、その影響、そして今後の展開について紹介します。

1. 日本製鉄がUSスチールを買収した理由

日本製鉄 USS ロゴ

日本製鉄がUSスチールを買収した理由は、主に以下の3つです。

1.1. 日本の鋼材需要の減少に対応するため

日本の鋼材需要は、少子化やインフラの老朽化、自動車産業の変革などにより、減少傾向にあります。とくに日本製鉄は、国内市場の縮小に対応するために、海外市場の拡大を図ってきました。

特に、米国は世界最大の鋼材消費国です。高付加価値の鋼材の需要が高いことから、重要な市場です。日本製鉄は、2003年に旧NKKの傘下だったナショナル・スチールの資産を買収しました。これにより、米国での事業基盤を強化しました。

しかし、米国の鉄鋼市場は、中国やロシアなどの安価な輸入品や、新興のミニミル(電気炉)による競争が激化しています。そのため、日本製鉄の収益性は低下していました。

そこで、米国の鉄鋼大手であるUSスチールを買収することで、米国でのシェアを拡大し、コスト削減や製品開発などのシナジー効果を狙ったのです。

1.2. 脱炭素社会への対応のため

日本製鉄は、2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量のバランスがゼロ)を目指すという日本政府の目標に沿って、自社の温室効果ガスの排出量を削減する取り組みを進めています。

その一環として、脱炭素社会に向けて需要が高まると見込まれる電気自動車(EV)に使う高機能鋼材の開発に力を入れています。USスチールも、同様にEV用鋼材の開発に注力しており、日本製鉄との技術連携により、両社の競争力が高まると期待されます。

また、USスチールは、水素や再生可能エネルギーなどの低炭素技術の導入にも積極的です。買収により、環境負荷の低減にも貢献すると見込まれます。

1.3. 米国の保護主義に対抗するため

米国は、トランプ前政権の時代から、中国などの安価な鉄鋼輸入品に対して高い関税を課すなど、保護主義的な貿易政策をとってきました。これにより、日本製鉄などの外国の鉄鋼メーカーは、米国市場へのアクセスが困難になりました。

バイデン政権になっても、米国の鉄鋼業界の保護は続くと見られております。そのため、米国内での生産拠点を増やすことで、関税の影響を回避しようとしたのです。USスチールを買収することで、米国の鉄鋼業界のリーダーとなり、米国政府との交渉力も強化すると考えられます。


2. 日本製鉄とUSスチールの買収の影響

日本製鉄とUSスチールの買収は、両社だけでなく、鉄鋼業界全体にも大きな影響を及ぼすと予想されます。以下に、主な影響を挙げます。

2.1. 日本製鉄の収益性と競争力の向上

日本製鉄は、USスチールの買収により、米国でのシェアを約20%に拡大し、米国の鉄鋼業界で最大手となります。これにより、日本製鉄は、米国市場での収益性と競争力を向上させることができます。また、日本製鉄は、USスチールとの統合により、年間約300億ドル(約3兆3000億円)のコスト削減や収益向上の効果を見込んでおります。これは日本製鉄の2020年度の売上高の約10%に相当します。

さらに、日本製鉄は、USスチールとの技術連携により、高機能鋼材や低炭素技術の開発にも弾みがつくと考えられます。

2.2. USスチールの経営改善と成長戦略の加速

USスチールは、長年にわたり、低迷する鉄鋼市場や激しい競争に苦しんできました。2020年度には、約10億ドル(約1100億円)の赤字を計上しました。これにより、負債も約40億ドル(約4兆4000億円)に膨らみました。

USスチールは、経営改善のために、コスト削減や資産売却、設備投資の縮小などの措置をとってきました。しかし、十分な効果が出ていませんでした。日本製鉄の買収により、USスチールは、財務状況の改善や資金調達の容易化、日本製鉄の高品質な製品や技術の導入などのメリットを享受することができます。

また、USスチールは、日本製鉄との連携により、自社の成長戦略である「Best for All」を加速することができます。この戦略は、お客様、従業員、株主、社会のすべてにとって最善の鉄鋼メーカーを目指すというもので、高機能鋼材や低炭素技術の開発、環境・社会・ガバナンス(ESG)の取り組み、多様性や包摂性の推進などが柱となっています。

2.3. 鉄鋼業界の再編と競争の激化

日本製鉄とUSスチールの買収は、鉄鋼業界の再編の波を巻き起こす可能性があります。世界の鉄鋼業界は、過剰生産や低価格競争、環境規制などの課題に直面しており、規模や効率、技術力などの面で優位に立つために、M&Aや提携が活発になっています。

例えば、中国の鉄鋼大手である宝武鋼鉄集団と安陽鋼鉄集団は、2020年に合併し、世界最大の鉄鋼メーカーとなりました。また、欧州の鉄鋼大手であるアルセロール・ミッタルとヌッコール・スチールは、2021年に米国での事業を分離し、それぞれの戦略に合わせて再編を進めました。日本製鉄とUSスチールの買収は、これらの動きに対抗するものと見られており、他の鉄鋼メーカーも追随する可能性があります。

一方で、日本製鉄とUSスチールの買収は、鉄鋼業界の競争を激化させることも予想されます。特に、米国の鉄鋼市場では、日本製鉄とUSスチールの統合により、市場の寡占化や価格の上昇、技術の独占などの懸念が高まっており、他の鉄鋼メーカーは、日本製鉄とUSスチールに対抗するために、価格競争や製品開発などの戦略を強化する必要があると考えられます。

まとめ

日本製鉄とUSスチールの買収は、日米の鉄鋼業界にとって歴史的な出来事です。両社は、買収により、収益性や競争力、環境対応力などの面で大きなメリットを得ることができます。しかし、買収には、市場の変化や競争の激化、規制の厳格化などのリスクも伴います。

日本製鉄とUSスチールは、買収の成功に向けて、両社の文化や経営の融合、お客様や従業員の満足度の向上、社会的責任の果たし方などの課題に取り組む必要があります。日本製鉄とUSスチールの買収は、鉄鋼業界の未来を大きく変える可能性があります。

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