脱中国の経営戦略 中国依存からの脱却とサプライチェーン再編

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脱中国という言葉が最近よく聞かれます。

福島第一原発から処理水を海に放出することが決まったのと同時に、中国が日本からの水産物を全面的に輸入禁止にしました。それによって、水産業者だけでなく飲食店などで様々な影響が出ています。

このような事態に対応するためには、中国に頼らずに自社を安定的に経営していく必要があります。しかし、どのようにすればいいのでしょうか。この記事では、脱中国の経営戦略として、中国依存からの脱却とサプライチェーン再編のポイントを紹介します。

1. 脱中国とは何か 中国ビジネスの現状と課題

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脱中国とは、中国から事業や資産を撤退させることを意味します。日本企業では、巨大なマーケットと豊富な労働力、そして安価な人件費をはじめとした「世界の工場」としての魅力から、国内外の生産拠点を中国に移設・集約し、強固で複雑なサプライチェーンを構築してきました。しかし、近年は人件費の上昇や環境規制強化などで「輸出基地」としての優位性が低下しております。また、米中貿易戦争や新型コロナウイルス感染拡大などでサプライチェーンが寸断されるリスクも高まっています。

また、国家安全保障やデータ管理などに関する法律や規制も厳しくなりました。それによって、外資企業への圧力や介入も強まっています。これらの要因から、日本企業も含めた欧米企業などを中心に、中国ビジネスを嫌気した「脱・中国」の動きがみられます。

2. 脱中国のメリット リスク低減と新たな市場開拓

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脱中国には、いくつかのメリットがあります。

まず、リスク低減です。中国から事業や資産を撤退させることで、政治的・経済的・社会的な不安定要因から自社を守ることができます。例えば、台湾有事への備えや米中対立への対応などです。また、中国に依存しないサプライチェーンを構築することで、生産や物流の混乱を防ぐことができます。例えば、新型コロナウイルス感染拡大に伴うロックダウンや輸出規制などです。

次に、新たな市場開拓です。中国から撤退した分だけ、他の国や地域に事業や資産を移すことができます。例えば、東南アジアやインドなどの新興国や、日本や欧州などの先進国です。これらの国や地域では、人口や所得の増加に伴う需要の拡大や、政治的・経済的・社会的な安定性などが期待できます。

3. 脱中国のデメリット コスト増加と市場喪失

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脱中国には、一方でデメリットもあります。まず、コスト増加です。中国から事業や資産を撤退させることには、多額の費用がかかります。例えば、工場や設備の移転や廃棄、人員の解雇や配置転換、契約の解消や違約金などです。また、中国に代わる生産拠点を確保することも容易ではありません。

例えば、人件費やインフラの水準、法律や規制の整備度、技術力や品質管理などです。次に、市場喪失です。中国から撤退することで、14億人超の人口規模が生み出す巨大なマーケットから自社を遠ざけることになります。

また、中国は世界第2位の経済大国であり、多くの国や地域と貿易や投資などで結びついています。そのため、中国との関係を断つことで、他の市場へのアクセスも失う可能性があります。

4. 脱中国の方法 事業整理とサプライチェーン再編

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脱中国を実現するためには、事業整理とサプライチェーン再編が必要です。事業整理とは、自社の事業ポートフォリオを見直し、中国で継続するべき事業と撤退するべき事業を明確に区別することです。

例えば、中国市場で高いシェアを持ったうえで競争力が高く利益率が高い事業は継続します。逆にシェアが低く競争力が低く利益率が低い事業は撤退するです。

サプライチェーン再編とは、自社のサプライチェーンを見直し、中国に依存しないように多様化・分散化・近距離化することです。例えば、部品や原材料の調達先を複数に増やします。そのうえで生産拠点を東南アジアや日本などに移すなどです。

5. 脱中国の成功事例 ダイキン工業と青山商事

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脱中国を成功させた日本企業の事例として、ダイキン工業と青山商事を紹介します。

ダイキン工業は、空調機器の世界最大手です。また、中国市場で高いシェアを持っています。しかし、中国の人件費の上昇や環境規制の強化などに対応するために、中国から生産拠点を移すことを決めました。具体的には、中国からベトナムやタイなどの東南アジアに生産拠点を移しました。中国では主に研究開発や販売に注力するという戦略です。これによって、コスト削減やサプライチェーンの安定化だけでなく、東南アジア市場への進出も促進することができました。

青山商事は、メンズファッションのリーディングカンパニーです。中国で約300店舗を展開しています。しかし、新型コロナウイルス感染拡大による消費低迷や中国政府の対日政策などにより、中国ビジネスの見通しが悪化しました。そのため、中国から撤退することを決めました。具体的には、中国での店舗数を半分以下に減らしました。残った店舗もオンライン販売に切り替えるという戦略です。これによって、赤字事業からの脱却や資金回収だけでなく、日本や欧州などの他の市場への集中投資も可能になりました。

まとめ

脱中国は、日本企業にとって避けられない経営課題です。中国から事業や資産を撤退させることは、メリットもあればデメリットもあります。そのため、一概に脱中国が正しいとは言えません。重要なことは、自社の事業ポートフォリオやサプライチェーンを見直し、自社にとって最適な脱中国の方法を見つけることです。また、脱中国は単なる撤退ではなく、新たな市場開拓や競争力強化の機会でもあります。そのため、脱中国を成功させるためには、戦略的かつ柔軟な対応が必要です。

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